この夏の話題作

satoyukiEII2006-08-13

ゲド戦記は、話題性はダントツですが今ひとつ良い評判を聞きません。私の元にも、複数の筋からツマランという情報が伝わってくる始末。逆にマイナーながら、これまた複数の筋から素晴らしいと評判なのが時をかける少女ブレイブストーリーは、ちょうどその中間という感じで、認知度もそこそこ、面白さもそこそこってなところでしょうか。王と鳥は世間の評判など気にせず、真に面白いものを求めての一点買いが好きな人向け。そんな中で私は、時をかける少女を観て参りました。


時をかける少女[劇場版]
我々の世代だと、どうしても原田知世版が頭に浮かんでしまうが、原作は同じものの、基本的に別物。原作の主人公であり、原田知世が演じた芳山和子は、本作では主人公・紺野真琴のおばさんとして登場し、自分の若い頃のタイムリープ経験談と助言(忠告?)を主人公に与えるという立場。舞台も現代の高校である。主人公は劇場アニメ版オリジナルキャラだし、ラベンダーの香りもしないし、完全な新作として楽しめるが、当然ながら時をかける少女であるので、主人公が時を飛び越えながら、失敗した過去をやり直すという展開で物語は進行する。まあ粗筋をこんなところで述べても仕方がないので、肝心の出来だが、これがまた凄まじい名作で。


キャラデザは貞本義行なんだがEVAや.hackなどに表現されている陰鬱さがまったくない、爽やかさを前面に押し出した作画で、表情や動きに至るまで快活で愛らしいの一言。主人公の妹がまたほとほと困るぐらいの萌えキャラなのはおまけとして、各キャラそれぞれに生き生きと描かれていて躍動的。ストーリーも笑いありスリルあり、しんみりさせられる場面ありで、息もつかせぬ展開で見る者を飽きさせない。CVがまた素人集団ながらよく鍛えられてて、拙さも残るものの、そこがかえってキャラクターの未熟さを醸し出していたりして、どこまで狙ってるんだか分からない周到さ。でも嗚咽だとか息を切らせて走るシーンだとか、演技の基本的な部分はきっちり出来ていて興醒めすることはなかった。


ハルヒの時もそうだったが、この映画を絶賛すると細田信者などと呼ばれてしまうらしい。信者がわけばアンチもわく、しかし作品の素晴らしさは嘘をつかないのだということを改めて教えてくれた映画であった。同行した非オタの友人までもが、DVDが出たら即買いとのたまうほど、傑作だったのである。